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芽生えのとき

2011年04月30日

 去る4月はじめ、鎌倉・鶴岡八幡宮のイチョウに逢ってきた。昨年の春の嵐で、根こそぎなぎ倒された大銀杏の無残な姿は記憶に新しい。あれから1年たった今、ふしくれだった巨大な根っこから無数の細い若木たちが空に向かって元気よく伸びつつあり、(根のないはずの)親木の幹からも多くの若い枝がのびていた。何しろ1000年近い樹齢の御神木ゆえ、人知をつくして、大切に養生されているのであろう。それにしてもこのイチョウの生命力には驚かされる。 

  あの3月11日の巨大地震では、あたかもどん欲な大ナマズのごとく、田畑も人家も車もそして人間も、要するに何もかも破壊し飲み込みながら突進した津波はあまりに現実離れしていて、テレビ等の画像を通してしか知ることのできなかった私などは、特撮のフィルムを見ている感じであったが、それでもショックは大きかった。そしてそれがフィクションではないことは、今もって全てをを失いながらも奮い立って生きてゆこうとしている人々の筆舌につくしがたい苦悩が残酷に証明している。自然は残酷であり自然の暴力の前に人間はいかに無力なことか。

  自然は他方で自らの力をもって生きとし生けるものの生命をはぐくんでもいる。すべてが瓦礫の山と化したところに、生き残った桜が可憐な花を咲かせている。八幡様の大銀杏の元気なヒコバエ達との出会いは、今年は特別に感動的であった。

 原発事故はしかしどうであろう。これは地震に端を発しているとはいえ、人災である。「夢のエネルギー源」といわれた核のもつ力が暴発して、人間の手におえなくなっているのではないかと懸念される。荒廃した田畑・放射性物質に汚染された海などなど。こうした人災を自然は鷹揚に包み込んでくれるものであろうか。

  大学も同窓会もありがたいことに今年もそれぞれ1000人余の新人をむかえることができた。キャンパスはさわやかな新緑の季節を迎えた。新人も新緑もびっくりするほど元気で若々しく美しい。この若い生命たちの前途に光がありますように、と心からお祈りする。

                                                    一柳 やすか 


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