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安井先生のまなざし

2016年10月28日

 

 9月17日、同窓会群馬支部主催で「学長懇話会」が開催された。東京女子大学学長は長らく外部出身の方が続いたが、13代の湊晶子学長より本学出身の学長が3代続いている。ご講演の中で小野祥子学長が「QUAECUNQUE SUNT VERA」とおっしゃったそのお声が、思いがけず胸に沁み、かつて在学中に“凡そ真なること”を生涯追究する姿勢を学んだことを思い出した。

 

 後日、群馬支部長から古田節子著『はばたく上州娘』(上毛新聞社2014年版)に安井てつ先生のことが書かれていると教えていただき、早速取り寄せた。ページを繰っていくと、群馬県富岡市出身の小金澤さわ氏が、製糸の技術を教授する目的でのタイ国滞在中に安井先生に巡り会い、苦労を労われたというくだりがあった。この時、安井先生はタイ政府に招聘され、王侯貴族の子女教育のための学校創立に力を注いでいた。小金澤氏と共にタイへ渡ったもう一人の女性技術者が、帰国後に日本でも学校を作るのかと質問したところ、安井先生は「いいえ。私は、本当はこういうことには向かない性分なのです」と答えたそうだ。

 小金澤氏ら2人は、安井先生の居宅で、貴重な水を涌かしたお風呂を使わせてもらう。「何事も、心の持ち方ではないかしら。精いっぱいやるだけやりましょう。選ばれた人なのですから、お互いに」という安井先生の言葉に、タイでの張りつめた心が溶きほぐされるようだったと書かれている。

 

 安井先生はその後再びイギリスへ渡り、後に東京女子大学初代学長の新渡戸稲造氏に請われて初代学監を引き受け、2代学長となったことは皆の知るところである。

 

 委員会の度に目を合わせる写真の安井先生は、はるか昔、東京女子大学創立期の方である。「凡そ真なること」を生涯強い意志で追究された立派な方であるが、私にとって遠い方であった。それが群馬支部とのご縁から、少しだけ身近な方になった。今度72年館へ行ったら、写真の目は優しいまなざしに見えるのではないかとも思う。 

 

                  会員活動副委員長 吉野則子


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